- 更新日 : 2024年6月30日
会社の実印とは?会社設立に必要なはんこの種類や選び方
会社の実印とは、会社の正式な意思であることを証明する印鑑のことを指します。この印鑑は法務局に登録され、法的な拘束力を持ちます。この記事では、どのような場面で会社実印が必要になるのか、印鑑の登録方法や作成方法、また、会社設立に必要なはんこについても解説していきます。会社の運営において適切な印鑑の知識を持ち正しい使い方をしていきましょう。
目次
会社の実印(代表印)とは?法人登記に必要
会社の実印とは、法人登記や重要な契約書に使用する会社の正式な印鑑のことを指します。会社の実印を押印することで、その書類が会社の正式な意思に基づくものであることを証明できます。
また、会社の実印は、会社法人の設立時に作成が義務付けられています。具体的には、会社設立の際に、印鑑証明書を作成し、法務局に提出する必要があります。この印鑑証明書には、会社の実印の印影が掲載されています。
会社の実印の管理については、管理責任者を決め、指定の施錠場所に格納して大切に保管する必要があります。
会社の実印登録と印鑑証明書を取得する方法
会社を設立する際には、実印を法務局に登録する必要があります。会社実印の登録方法は以下の通りです。
- 会社設立時の登記:まず、会社設立時に法務局で「登記」の手続きを行います。この際に会社の印鑑を届け出ておくのがおすすめです。届け出る印鑑は「代表者印」と呼ばれ、会社の実印となります。
- 印鑑登録: 「印鑑届書」を提出し、印鑑登録を行います。印鑑登録には会社の実印と、届け出る本人の「個人」の実印・印鑑証明書も必要です。
- 印鑑登録完了:申請書類の審査後、法務局で登録手続きが完了します。
- 印鑑カードの取得: 印鑑登録が完了したら、「印鑑カード交付申請書」を提出して印鑑カードの交付を申請します。この印鑑カードは、会社の「印鑑証明書」を取るために必要となります。
- 印鑑証明書の取得: 印鑑カードを取得したら、法務局の窓口で「印鑑登録証明書交付申請書」と印鑑カードを提出し、印鑑登録証明書の交付申請をします。
以上の手続きを踏むことで、会社実印の登録と印鑑証明書取得が完了します。
また、法人の印鑑登録を代理人が行う場合は、印鑑届出書に代理人の印鑑(認印でOK)を押し、委任状の欄には本人が「個人」の実印を押す必要があります。
会社の実印(代表印)を利用するシーン
会社の実印は、法的な効力を持つ重要な文書に使用されます。ここでは、どのような場面で会社の実印が必要となるのか、主な例を挙げて解説します。
重要な契約書の認証
会社が他の企業や顧客との間で取引を行う際、特に大規模な商談や長期にわたるビジネス関係の構築において、契約書には法的拘束力を持たせる必要があります。このため、代表者が実印を押すことで契約の正式な成立と、双方の合意内容の確認が行われます。
不動産の売買や賃貸契約
不動産取引において、会社が物件を購入または売却する際には、登記所での手続きが必須とされています。登記簿への記載や変更を正確に反映させるためには、会社実印が必要であり、これにより取引の法的有効性が保証されます。
金融機関での手続き
金融機関では、新規の口座開設や大規模な融資、投資の際に会社実印の使用を要求されることが一般的です。これは金融取引の正確性と安全性を高めるために重要であり、具体的には口座開設申込書や融資契約書への捺印が必要になります。
雇用契約の締結
新しい従業員の採用時には、雇用契約を結ぶ必要があります。会社として従業員に対し法的に認められた権利と義務をクリアに示すため、雇用契約書には代表者の実印が押されることもあります。
株式の発行
新たに株式を発行する際、それに伴う株券やその他の関連文書に会社実印を押印し、これが会社の正式な意思であることを示します。実印の押印は、投資家に対する信頼性の向上にも繋がります。
その他公式な書類の発行
会社運営においてさまざまな公式文書が必要となることが多々あります。例えば、企業統合の公告、新たな業務ポリシーの発表、重要な内部通知など、これらの文書に会社の実印を使用することで、文書の公式性と重要度が際立ちます。
会社の実印(代表印)にはサイズの決まりがある
法人が使用する会社の実印はどれでも良いわけではありません。適切な印影サイズが法令によって定められています。このサイズ規定は、印鑑証明書とともに正式な文書としての機能を果たすために重要です。
サイズは直径が18mm~21mmの範囲内
法人用の実印は、1cm以上3cm以内の正方形に収まるサイズでなければなりません。サイズが小さすぎると印鑑証明に必要なクリアな印影が得られにくくなり、大きすぎると書類に収まりにくくなるからです。登録される印鑑の規格に合わないサイズの実印は、公文書としての役割を果たしません。一般的には直径が18mmから21mmの印鑑が用いられています。
実印サイズを変更する場合の手続き
会社の実印サイズを変更する場合、法務局に届け出てある印鑑を変更する手続きが必要です。この手続きは、法務局に「印鑑(改印)届書」を提出することで行うことができます。その際には、代表者個人の実印と印鑑登録証明書も必要です。
印鑑カードは引き続き使用できますが、印鑑カードも改めたい場合は、「印鑑・印鑑カード廃止届書」を提出した上で、改めて会社実印の届出と印鑑カード交付申請を行うことになります。
会社の実印を作成する際のポイント
会社の実印を作成する際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
形状は「天丸タイプ」
法人用の印鑑では一般的に天丸型が推奨されます。天丸タイプとは、印鑑の天地(上下)が丸くなっているタイプのことを指します。一方、一般的な個人印鑑でよく見られる、天地が平らなタイプは「平柄タイプ」と呼ばれます。
会社の実印に天丸タイプがおすすめなのは上部が丸く、持ちやすい形状であるためです。また、鮮明な印影、角印とのバランスの良さ、摩耗しにくさなど、様々なメリットがあります。実際、多くの企業が会社実印に天丸タイプを採用しています。
特に大切な契約書類や法的書類に使用する場合、この形状が信頼感を与える一因となります。
刻印内容
会社実印に刻む内容には、法人名や代表者名が含まれます。法的効力を持たせるため、正確な企業名を登録し、誤字脱字のないよう特に注意が必要です。また、印鑑登録をする際には、この刻印内容が正確に反映されている必要があります。印鑑登録済みの内容と異なる印鑑を使用した場合、その文書の法的有効性が問われる可能性があります。
書体は篆書体(てんしょたい)がおすすめ
篆書体はは複雑な形状のため、偽造防止や複製を防ぎやすい特徴があります。そのため、セキュリティを重視する場合に適した書体と言えるでしょう。
また、篆書体は、古くから公的な印章に用いられてきた書体であり、それ自体に格式や由緒を感じさせます。この書体を用いることで、会社の信頼性や安定感を印象づけることができます。
その他に、篆書体を基にした、印相体(いんそうたい)という書体もあります。文字が印鑑の縁に接している特徴があります。そのため、印鑑全体が一つのデザインとなり、美しさとともに偽造防止にも効果的です。また、八方向に伸びるようなデザインから「吉相体」とも呼ばれ、縁起が良いともされています。
印鑑の素材や材質
印鑑の材質には、象牙やチタン、樹脂など様々な種類があります。最も高品質な象牙は耐久性が高く、長期間の使用に適していますが、環境保護の観点から使用を避ける企業も増えています。代わりにチタンや黒水牛、高品質な樹脂製印鑑が一般的です。これらは耐久性にも優れ、美しい印影を残すことができます。また、チタン製の印鑑はその硬さと耐食性において他の材料を凌駕し、長年にわたる使用でもその品質を保持します。
会社設立時に必要なはんこの種類
会社の実印(代表印)
会社実印は、会社設立時に必要な法人登記において使用される印鑑で、法人の正式な代表印として公文書に用いられます。この印鑑が押された文書は、法人による正式な意思表示があったと認められます。一般的には直径は18mmから21mm程度が選ばれ、材質には耐久性と印影の美しさからチタンや黒水牛、高品質な樹脂が推奨されます。
会社の実印を制作する際は、印鑑登録を行うことが前提となるため、彫刻する内容(法人名など)が正確であることが求められます。また、印鑑の耐久性や防犯性を考慮し、なるべく複製が困難なデザインの選択が推奨されます。
銀行印
銀行印は、会社の銀行取引において必要とされる印鑑で、口座開設や各種金融契約の際に使用します。会社実印とは異なり、こちらは少し小さめのサイズが好まれ、直径は15mmから18mmの間で選ばれることが多いです。材質は実印と同様にチタンや黒水牛などが一般的です。
日々の取引が多い銀行印は、使用頻度が高いため耐久性に優れた材質を選ぶことが重要です。また、会社の実印と区別できるように、デザインに工夫を凝らすことで誤用を防ぎます。
社判(角印)
社判、または角印は、取引契約書や日常的な書類への押印に使用される四角形の印鑑です。会社名が隅々まで正確に表示され、文書に正式性をもたらします。一般のサイズは21mmから24mmの正方形で、はっきりとした印影が特徴です。
社判は主に外部との契約書に使用されるため、印影の視認性と正確性が求められます。また、公的な書類ではなく内部文書にも使用されることが多いです。
認印(会社認印)
会社認印は、会社の実印以外の印鑑すべてを指します。会社認印は宅急便・書留の受け取りなど、会社における了承・承認の意志を示す際に日常的に使用します。使用頻度が高いため、盗難・紛失帽子のためにも実印・銀行印・角印などとは別で用意するようにしましょう。
認印とはいえ会社で印鑑を押すということは、意思表示をする重要なことですので、オリジナルの印鑑を作成すると良いでしょう。認印は法的にデザインが定められているわけではないので、自由に作成しましょう。
ゴム印
ゴム印は、配送書類や領収書、日常的な通知書など、速やかな文書処理を必要とする場面で使用されます。ゴム印は形式を問わず、迅速かつ効率的な文書管理を可能にします。サイズやデザインは用途に応じて多様に存在します。
日常的に頻繁に使用されるゴム印は、可読性・耐久性が高いものを選ぶと良いでしょう。また、インクの補充が簡単なタイプを選ぶことで、長期間にわたって安定した使用が期待できます。
電子契約の場合は、会社の実印の押印が不要!
電子契約とは、紙の書面による契約ではなく、電子的な手段を用いて締結する契約のことを指します。従来の紙の契約書では、契約の締結には実印の押印が必要不可欠でしたが、電子契約を利用すると、実印の押印が不要になります。
電子契約では、実印の押印に代わって、以下のような方法で本人確認を行います。
- 電子署名:電子署名法に基づく電子署名を利用することで、本人確認を行います。
- タイムスタンプ:契約締結時刻を第三者機関が証明するタイムスタンプを付与することで、契約の真正性を担保します。
- SSL暗号化通信:インターネット上でのデータのやり取りを暗号化し、安全性を確保します。
会社実印の押印が必要な紙の契約書と比べ、電子契約は利便性が高く、今後ますます利用が広がっていくことが予想されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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