• 更新日 : 2024年7月3日

ハンコなしでも契約書は有効?押印がないリスクや押し方のルールを解説

ハンコは契約書に押印する際に重要な役割を果たしていますが、実は法的にはハンコがなくても契約は成立します。一方で、ハンコがないと様々なリスクが生じる可能性があります。

この記事では、契約書に使われるハンコの種類(どのようなハンコが使われるのか)、押印の方法やルール(どのように押印するのが適切か)、およびハンコ以外の代替手段として、署名や電子契約の活用についても解説します。ビジネスの現場で不可欠な契約書の作成と管理について、この記事を参考にしてみてください。

契約書にハンコなしでも有効?法的効力は?

日本では、契約書にハンコ(印鑑)が押されることが一般的です。しかし、法律上必ずしもハンコが必要とされているわけではありません。印鑑がない契約書でも、当事者間の合意が成立していれば、その契約の法的効力は問題なく発生します。

ただし、慣習上、重要な契約書にはハンコを押すことが一般的です。金融機関の取引や不動産の売買など、特に重要な契約では、ほとんどの場合はハンコが必要とされています。

契約書にハンコが押される理由

日本では、契約書にハンコ(印鑑)を押すことがビジネス上の慣習となっています。

理由としては、契約書にハンコを押すことで契約の当事者がその内容に同意していることを示せるためです。つまり、ハンコを押すことで、その人が契約内容を理解し、それに同意したという証拠になるのです。

また、契約書に締結者本人のハンコを押すことで、本人が押印したことが推定され、さらに契約書が真正に成立したことが推定されます(=二段の推定)。

契約書にハンコがない場合のリスク

契約の証明力の低下

ハンコは契約に対する各当事者の意思表示を証明するものです。契約書にハンコがない場合、その契約書の証拠力が低減します。

たとえば、不動産の売買契約書にハンコがない場合、売買が正式に成立したことを証明するのが難しくなり、不動産の所有権移転に関して後にトラブルが発生するリスクが生じます。

取引先の信頼性の低下

取引先がハンコのない契約書を敬遠する場合があります。日本においては、ハンコは企業間の信頼を象徴する重要な要素であり、ハンコが押されていないと正式な契約書としての認識がされにくいです。

特に新規取引先との契約でハンコがないと、信頼性を欠くと見なされ、ビジネスチャンスを失う可能性があります。

会社内での取り扱いが不明確

会社内部でハンコがない契約書の扱いがルール化されていないと、問題が発生する可能性があります。ハンコがない契約書では、誰がどのように契約を結んだのかを追跡するのが難しくなり、責任の所在が曖昧になりがちです。

たとえば、社員が勝手に契約書を作成し、ハンコを押さずに契約してしまった場合、企業全体に影響を与える問題が起きる可能性があるのです。

行政手続きでのトラブル

行政手続きを伴う契約では、ハンコが必要とされる場合があります。事業許可の申請や公的融資の申請などでは、ハンコがないと手続きがスムーズに進まなかったり、申請自体が受け付けられないこともあります。

重要な行政手続きを行う際は、ハンコを押す必要があるかどうかを事前に確認しましょう。

第三者によるなりすまし

ハンコがない契約書は、第三者に偽造されやすくなるというリスクがあります。本人しか押せないハンコが押されていなければ、契約書の偽造やなりすましによる被害に遭う可能性が高くなるのです。

たとえば、取引先が偽造した契約書を使って不正に利益を得るのを防ぐためにも、ハンコの押印は重要です。

契約書に用いられるハンコの種類

実印

実印は、役所に登録されている最も信頼性が高い印鑑です。契約書に実印が押されれば、本人の意思確認が強く保証されます。不動産取引や大額のビジネス契約など、重要な取引では実印の押印が求められることが多いです。実印を使う際は、印鑑証明書の添付が一般的です。

認印

認印は日常的な用途の印鑑で、特別な登録は不要です。契約書にも使えますが、信頼性は実印や銀行印に比べて低いです。家庭内の契約や小規模な取引では認印が使われますが、大きな取引には適していません。

銀行印

銀行印は、銀行口座を開設する際に使用する印鑑です。契約書に使用されることもありますが、印鑑としての信頼性は実印よりも劣ります。それでも、銀行印は各種手続きで重要な役割を果たします。

たとえば、融資契約や預金通帳の管理などの場面で頻繁に使用されます。銀行印を使う際には、契約書にどの印鑑を用いるべきかを事前に確認しておくと良いでしょう。

社印(角印)

社印(角印)は、企業が使用する印鑑です。会社の契約書類に押印されることが一般的です。法人契約の場合、社印の押印が求められることが多いです。具体的には、企業間の業務委託契約や取引基本契約書などで社印が必要となります。

また、社印を使用する際にはその企業の社内規程に従い、適切に管理されていることを確認することが重要です。

代表者印

代表者印は、企業の代表者が使用する印鑑です。通常、社長や取締役などの役職名と氏名が刻印されています。会社の重要な契約書に用いられることが多いです。法人の実印に相当し、信頼性が高いとされています。

たとえば、代表取締役が取引先と交わす重要な契約や、株主総会の議事録に用いられることが一般的です。代表者印の使用には、その企業内での権限や責任が明確に定義されていることが前提となります。

契約書のタイプと使用されるハンコの例

不動産取引

不動産の売買に関する契約書には、実印の使用が一般的です。不動産取引は大きな資産が関わるため、最も信頼性の高い実印が求められます。これに対して、不動産賃貸借契約書については認印も認められることがあります。

建築契約・工事契約

建設会社と発注者の間で交わされる工事請負契約書には、会社の代表者印が使用されます。また、元請け業者と下請け業者の間で締結される下請け契約書にも、同様に代表者印が押印されます。

下請け契約

物品の納入に関する契約書などの下請け契約書には、下請け業者の代表者印が使用されます。発注者との契約関係を明確にするため、信頼性の高い印鑑が必要とされます。

労働者雇用契約

労働者との雇用契約書や退職に関する書類には、会社の代表者印や個人の認印が使われます。

一般的な商取引

販売店との契約書や業務委託契約書など、一般的な商取引に関する契約書には、会社の代表者印や社印が使用されます。取引の重要性に応じた印鑑が求められます。

契約書へのハンコの押し方、ルール

契約書に印鑑(ハンコ)を押す際には、一定のルールがあります。以下に、その基本的なルールをご紹介します。

ハンコの正しい押印位置

契約書においてハンコを押すべき場所は契約書の最後、当事者の署名または名前の横です。正確な位置は契約書の形式によりますが、多くの場合、署名欄のすぐ隣にハンコを押します。

具体例として、不動産売買契約や雇用契約書の場合は、特定のスペースに押印することが一般的です。

押印の順番

契約書に複数の人が印鑑を押す場合、通常、先に印鑑を押すのは契約の申し出者(売主や貸主など)で、その後に受諾者(買主や借主など)が印鑑を押します。

ハンコの押し方

ハンコを押す際には以下のポイントに注意してください。

押印する前に、インクが不足していないか確認しましょう。鮮明な印影が得られ、後々の確認作業が容易になります。

ハンコを押す際の注意点は、斜めにならないように真っ直ぐ押印します。斜めになると契約の信頼性が損なわれます。

また、力を均一にかけてかすれないようにします。かすれた印影はトラブルを招く可能性があります。

複製契約書の押印方法

通常、契約書は複製が作成され、各当事者によって1部ずつ保持されます。その場合、各コピーに同じハンコを押す必要があります。全てのコピーに同じ印章があることで、契約書の真正性が保たれます。

また、複数の部数を作成する際には、一度に全てのコピーに対して押印するようにしましょう。これによって、全ての契約書が同じ内容であることを確実にできます。

契約書へのハンコ以外の代替手段

署名(サイン)

ハンコの代わりに、手書きの署名を使うことができます。署名には、ハンコと同等の法的効力があります。本人確認ができれば、署名だけでも契約は成立します。特に国際的な取引においては、サインが一般的に使用されています。

契約書に署名する際は、氏名をフルネームで明確に記入しましょう。あまりにも簡単すぎる署名は、偽造されやすい可能性があるためです。

電子契約の活用

近年、特にリモートワークの普及に伴い電子契約が一般的になっています。電子契約とは、紙の契約書に代わって、電子的な形式で契約を締結することを指します。

これにより、契約書の作成、送付、保管などがデジタル化され、契約の締結を迅速に行うことができます。電子契約は、印紙税や郵送費用などのコストを削減することができます。

ただし、電子契約の方法や、相手方の理解を得る必要があるなど、課題もあります。状況に合わせて電子契約の活用を検討することが大切です。

印紙税(収入印紙)が必要な契約書

契約書を作成する際には、印紙税(収入印紙)が必要となる場合があります。印紙税とは、契約書や領収書などの文書に対して課される税金のことを指します。これは、文書が一定の法的効力を持つことを公的に認めるためのものです。

印紙税が必要となる契約書は、その契約の内容や金額によります。たとえば、不動産の売買契約や高額の金銭消費貸借契約などでは、印紙税が必要となることがあります。

印紙税が必要となる主な契約書には以下のようなものがあります。

  • 不動産取引:不動産の売買契約や賃貸契約などでは、印紙税が必要となることがあります。
  • 請負契約:工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書などが請負に関する契約書に該当します。
  • 金銭貸借契約:一定の金額以上の金銭貸借契約では、印紙税が必要となることがあります。
  • 合併契約:企業の合併を行う際の契約書にも印紙税が必要となることがあります。
  • 信託契約:信託契約に関する契約書にも印紙税が必要となることがあります。

これらの契約書には、印紙税を示す「収入印紙」を貼る必要があります。収入印紙の金額は、契約金額に応じて決まっています。

詳しくは下記をご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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