• 更新日 : 2024年7月10日

税務調査が入る確率は?個人事業主(一人親方)も対象?入りやすい特徴や対策

税務調査とは、税務署が申告内容や納税状況を確認する調査です。個人事業主や法人に対して行われ、業種や収入などによって入る確率が異なります。税務調査が入ると、帳簿や書類の提示を求められ、申告内容に誤りがあれば修正申告等の対応が必要です。

この記事では、税務調査を受けやすい条件や金額の目安、税務調査のリスク対策を解説していきます。

税務調査とは?

税務調査とは、税務署が納税者の申告内容や納税状況を確認するために行う調査のことです。申告内容に誤りがないかどうか、適正に税金が納められているかどうかを確認するのが目的です。

税務調査には大きく分けて2種類あります。任意調査と強制調査です。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

任意調査

任意調査は、納税者の自宅または事務所に事前通知を行い、納税者の同意を得て実施される調査です。

この調査は、事前に通知され、日時を調整することが可能です。税務署が税金の計算や申告に問題がないかを確認するために行われます。通常、税務局員が直接訪問して資料の確認や質問を行います。

具体的には、以下のような点が確認されます。

  • 収入の計算が正確であるか
  • 必要な経費が適切に控除されているか
  • 税金の申告や納付が適切に行われているか

納税者は調査に応じる義務はありませんが、応じないと強制調査に移行する可能性があります。場合により、任意調査で指摘された内容について修正申告を行うことになります。

強制調査

強制調査は、税務署が強制的に行う調査で、事前の通知なしに突然行われます。この調査は、税法違反の疑いがある場合に、裁判所から発行された許可状に基づいて実施されます。

以下のような場合に、強制調査が行われる可能性があります。

  • 大幅な申告漏れや虚偽申告の疑いがある場合
  • 税金の脱税や逃避の疑いがある場合
  • 税務署の指導に従わない場合

納税者は強制調査に応じなければならず、拒否することはできません。もし強制調査の結果、脱税などの事実が明らかになった場合、刑事告発に発展する可能性もあります。

ただし、強制調査となるケースは稀であり、実務において税務調査というと、ほとんどが任意調査のことを指します。

個人事業主に税務調査が入る確率は?

個人事業主が税務調査を受ける確率は、様々な要因によって変わってきます。

令和3年(2021年度)のデータによると、個人に対する実地調査の件数は約28万3,000件でした。一方、同年度に確定申告を行った個人のうち、事業所得と不動産所得のみを申告した件数は約657万件でした。

これらの数値から計算してみると、個人事業主が税務調査の対象となる確率は、約0.5%となります。

これは、約200年に1回、あるいは100年に1回程度の頻度で税務調査の対象となり得るということを意味します。しかし、税務調査の対象はランダムに選ばれるわけではありません。ある程度の傾向があるため、日頃から税務調査の対象とならないようにきちんとバックオフィス業務を行っておくことが大切です。

会社・法人に税務調査が入る確率は?

一般的に、会社や法人が税務調査を受ける確率は、約2%から3.2%程度だと言われています。これは、平均して30年に1回くらいの頻度で税務調査の対象になる可能性があるということを意味しています。

令和4年度(2022年度)のデータによると、法人税の申告件数は約313万件、税務調査の実施件数は約6万2,000件でした。

これらの数値を使って計算してみると、会社や法人が税務調査の対象となる確率は、約1.98%になります。つまり、法人税を申告した会社のうち、約1.98%が実際に税務調査を受けたことになります。

ただし、この確率は会社や法人全体の平均値であり、業種や規模、過去の調査履歴などによって、税務調査を受ける可能性は大きく変わってきます。とはいえ、この数値からも、会社や法人が税務調査の対象になるリスクは、無視できないものだと言えるでしょう。

税務調査が入りやすい所得金額はいくらから?

税務調査が行われるのは、特定の金額からという訳ではありません。しかし、一般的には、課税対象となる所得金額が1,000万円を超えている場合、税務調査を受けるリスクが高まると言われています。しかし、これはあくまで目安であり、1,000万円以下の所得であっても、税務調査が実施されるケースは存在します。

税務調査は、納税者が適正に税務申告を行っているかどうかを確認するための手続きであり、納税額が大きいほど、税務調査の対象となる可能性が高いと考えられています。また、売上高に対して利益が少なかったり、売上高が1,000万円をわずかに下回る申告が続いていたりする場合なども、税務調査のターゲットになりやすいとされています。

ただし、税務調査の対象となるかどうかは、所得金額だけではなく、申告内容や業種、事業規模など、様々な要因が総合的に判断されます。したがって、たとえ所得が1,000万円を超えていたとしても、適切な税務申告を行い、税法を遵守していれば、必ず税務調査を受けるわけではありません。

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴は、以下のようなものがあります。

売上が急に伸びている

個人事業主の売上が急激に伸びている場合、税務調査の対象となる可能性が高まります。これは、売上の急増が事業の実態と乖離している可能性を税務署が疑うためです。

例えば、前年度までは売上が低迷していたにもかかわらず、特別な理由もなく突然売上が倍増したようなケースでは、税務署から不自然な増収だと見なされるかもしれません。

また、売上が急に伸びているにもかかわらず、経費があまり増えていない場合も、税務署の疑念を招く可能性があります。売上の増加に伴い、仕入れや人件費などの経費も自然と増えるはずですが、そのバランスが取れていないと、売上の水増しを疑われる恐れがあるのです。

利益が少なすぎる

個人事業主の利益が少なすぎる場合、税務調査の対象となりやすくなります。事業主の収入に対して、経費が不自然に多かったり、申告所得が極端に低かったりすると、税務署から不審に思われる可能性が高まるのです。

例えば、同業他社と比べて売上規模が同程度であるにもかかわらず、利益率が著しく低い場合などは要注意です。また、事業主の生活水準と申告所得が見合っていないケースも、税務署の注意を引きやすくなります。

売上高1,000万円にわずかに届かない

売上高が1,000万円をわずかに下回り、ギリギリ課税事業者にならなくて済むような申告が継続的に行われている個人事業主は、消費税の納税を逃れようとしているのではないかと疑われ、税務調査の対象になる可能性が高いです。

申告漏れが多い業種に属している場合

申告漏れが多いとされる業種に属する個人事業主は、税務調査を受けるリスクが相対的に高くなります。これらの業種では、申告漏れが多く発生する傾向があるため、税務当局が重点的に調査を行う対象となっているのです。

申告漏れの多い業種として、経営コンサルタントが最も多い業種になっています。

引用:国税庁「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」

確定申告をしていない

確定申告をしていない個人事業主は、税務調査の対象になる可能性が高くなります。取引先の税務申告や税務調査によって、取引している個人事業主の売上が推測できるからです。

長期的に税務調査が入ってない

長年にわたって税務調査が行われていない個人事業主も、税務調査のターゲットになりやすい傾向があります。税務当局としては、一定期間ごとに事業者の税務状況を確認する必要があるため、長期間調査が行われていない事業者は、優先的に調査対象になると考えられます。

これらの特徴を持つ個人事業主は、税務調査に入る確率が高くなります。したがって、個人事業主として活動する際には、これらの点を意識し、適切な税務処理を心掛けることが重要です。

税務調査が入るとどうなる?

税務調査が入ると、国税庁の職員が事業所に訪問し、帳簿や書類の提示を求められます。調査の目的は、申告内容に誤りがないかどうか、適正に税金が納められているかどうかを確認することです。

具体的な流れは以下の通りです。

  1. 事前通知
    税務調査は事前に税務署から電話で連絡が入ります。税理士が税務代理を行っている場合は、連絡が入る先は顧問税理士です。税務調査の日程や必要な資料などについて説明を受けます。
  2. 日程の調整
    税務調査の日程や実施場所を決めます。法人の場合は事務所で税務調査を行うことが一般的ですが、税理士事務所などへの実施場所の変更も可能です。
  3. 事前の準備
    日程と実施場所が決まったら、税務調査に向けて顧問税理士と打ち合わせをしましょう。当日の流れなどを擦り合わせます。事前に税務署から案内される必要書類の用意も必要です。
  4. 当日の調査
    税務調査当日は、来訪した調査員に対応します。挨拶や雑談のあとに、事業概要の説明などを求められることが多いです。その後、事前に用意した必要書類をもとに調査が行われます。調査は数日から数週間にわたることもあります。
  5. 調査結果の通知
    調査終了後、税務調査から2~3週間後に結果が通知されます。申告内容の修正が必要な場合は手続きに則って対応します。申告内容に誤りがなければ、そのまま終了します。

税務調査では、売上の計上漏れや期ズレが発生していないか、仕入れ・外注費の計上に問題がないか、棚卸資産の計上漏れなどが確認されます。また、税務調査において調査官がどのようなポイントをチェックすることが多いのか把握しておくと、日頃の実務でのミスを減らすことにも繋げられます。

税務調査が来ないようにする対策は?

税務調査は、適正な申告と納税を確認するために行われるものですが、事業者にとっては大きな負担となります。では、税務調査が来ないようにするには、どのような対策が必要でしょうか。

正確な記帳を心掛ける

個人事業主が実施すべき最も基本的な対策としては、正しく記帳することです。

収入や支出のすべてを正しく記録し、必要な書類や領収書を保管しておくことが重要です。記帳が不正確だと税務調査の際に誤解を招く可能性があります。

事業者は客観的な事実に基づいた事実の記帳を行わなければならないという「企業会計原則」の「真実性の原則」を遵守しましょう。

締め切りを守り適切な税務申告を行う

年間の収支報告は正確に行い、申告漏れがないように注意しましょう。税理士に依頼することで、より専門的な支援を受けることが可能です。申告漏れが発覚すると追徴税を課されるリスクが高まります。

また、税務申告の締め切りを守ることも、リスクを減らします。期限ギリギリに申告すると、ミスが発生しやすくなるため、余裕を持って申告を完了させましょう。

経費の適切な管理

個人事業主は仕事に関連する経費も正確に記録する必要があります。何が経費に該当するか正しく理解し、無駄な税金を払わないようにしましょう。経費の不適切な管理は税務調査の対象となり得ます。

頻繁な変更や修正を避ける

頻繁に帳簿を修正することは、税務調査のトリガーになり得ます。初回の記録時に正確さを期すことが大切です。修正が多いと税務調査官に疑念を抱かれることがあります。

会計ソフトウェアの活用

適切な会計ソフトウェアを使用することで、記帳ミスを防ぎ、時間も節約できます。多くの会計ソフトウェアは税務申告を容易にする機能も備えています。例えば、マネーフォワードクラウドなどがおすすめです。

税理士との定期的な相談

税理士と定期的に相談することで、税務上の問題を未然に防ぐことができます。また、法令改正にも対応しやすくなります。年に一度ではなく、四半期ごとにチェックしてもらうことが理想的です。

過去の税務調査の経験を活かす

もし過去に税務調査があった場合、そのときの指摘事項を改善し続けることが重要です。税務署からのフィードバックは再発防止に役立ちます。具体的には、指摘された項目をメモし、次の申告では特に注意を払うことが必要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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