• 更新日 : 2024年8月10日

印紙税法とは?収入印紙が必要な文書と料金、節税、不要な場合

印紙税法とは、契約書や領収書などの文書に課される税金に関する法律です。

建設業界で働く人なら、印紙税法に関する知識は欠かせません。本記事では、印紙税法の基本から、具体的な文書や契約書での適用例、節税のコツ、印紙税が不要なケースを解説していきます。印紙税法の仕組みを正しく理解し、どの文書に適用されるのか、印紙を貼り忘れたときのリスクなど、実務に役立つ知識が満載です。また、デジタル化が進む中で注目されている電子契約書と印紙税の関係についても解説しています。

印紙税法とは?

印紙税法は、経済取引における契約書や領収書など、特定の文書に課税される間接税の一種です。この税金は、文書に収入印紙を貼ることで納付します。

印紙税は収入印紙を添付して納付する

印紙税の納付方法は、対象となる文書に収入印紙を貼り付けることです。文書の種類や金額に応じて、適切な額面の収入印紙を選択し、貼付する必要があります。
印紙税法では、特定の文書を作成した際に必要とされる収入印紙を文書に添付し、提出または交付することで税金が納付されます。この手続きは、文書に公的な信頼性を持たせるため、また法的な効力を保証するために必要です。

収入印紙は、郵便局や印紙売買所で購入できます。

印紙税は誰が負担するのか

印紙税の負担者は、原則として文書の作成者や契約の当事者です。ただし、契約書の場合、契約当事者間の合意によって、負担割合を決めることができます。建設業界では、工事請負契約書や下請契約書などで、発注者と受注者の間で印紙税の負担を取り決めるのが一般的です。

なぜ印紙税がかかるのか

印紙税は、契約書やそれに類似する文書に対して公的認証を行うことです。その文書の法的有効性や真正性を保証し、取引の透明性が高まり、トラブルを防止する目的で課せられます。

建設業での印紙税法が関わる文書や契約書

建設業界では、様々な文書や契約書が取り交わされますが、その多くが印紙税法の対象となります。以下に、代表的な文書・契約書とその印紙税額について解説します。

工事請負契約書

工事請負契約書は、発注者と受注者の間で交わされる重要な文書です。租税特別措置法により、建設工事の請負に伴って作成される請負契約書について、印紙税の軽減措置が講じられ、税率が引き下げられています。具体的な税率は契約金額によりますが、例えば契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、軽減税率は1万円となります。

工事請負契約書の収入印紙の金額は、契約金額によって決まります。現在、租税特別措置法による軽減措置が適用されており、税率が引き下げられています。

工事請負契約書の収入印紙税額(2号文書)

契約金額印紙税額(円)
契紙金額の記載のないもの200円
1万円未満非課税
100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1千万円以下10,000円
1千万円を超え5千万円以下20,000円
5千万円を超え1億円以下60,000円
1億円を超え5億円以下100,000円
5億円を超え10億円以下200,000円
10億円を超え50億円以下400,000円
50億円を超えるもの600,000円

出典:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

出典:印紙税額|国税庁

工事下請契約書

下請契約書も、工事請負契約書と同様の税額が適用されます。元請業者と下請業者の間で交わされる契約書には、適切な収入印紙を貼付しなければなりません。

工事変更契約書

工事の途中で工事内容が変更となった場合や金額に変更が生じた場合、工事変更契約書が作成されます。この文書にも、変更後の契約金額に応じた印紙税が課されます。

注文書・注文請書

建設材料の購入や工事の発注を行うための文書です。一定の金額を超える取り引きには印紙税が必要となります。

不動産の売買契約書

不動産取引を行う際には、取引価格に応じた印紙税が必要です。不動産契約書は大きな金額が動くことが多いため、印紙税も高額になりやすいです。

契約金額(円)印紙税額(円)
契約金額の記載のないもの200円
10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1,000円
100万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1千万円以下10,000円
1千万円を超え5千万円以下20,000円
5千万円を超え1億円以下60,000円
1億円を超え5億円以下100,000円
5億円を超え10億円以下200,000円
10億円を超え50億円以下400,000円
50億円を超えるもの600,000円

領収書

高額な取引における領収書は、印紙税法で定める一定額以上の場合、印紙を貼付する必要があります。例えば、50万円を超える取引では、収入印紙が必須となるケースがあります。

領収書の収入印紙税額(2号文書)

受取金額(円)印紙税額(円)
受取金額未記載200円
5万円未満非課税
5万円以上100万円以下200円
100万円超~200万円以下400円
200万円超~300万円以下600円
300万円超~500万円以下1,000円
500万円超~1,000万円以下2,000円
1,000万円超~2,000万円以下4,000円
2,000万円超~3,000万円以下6,000円
3,000万円超~5,000万円以下10,000円
5,000万円超~1億円以下2万円

建設機械の賃貸借契約書

重機や機材のレンタルに関する契約文書です。契約内容や金額に応じて印紙税の対象となります。契約期間や料金に基づいて、適正な印紙税を納める必要があります。

印紙税法の対象となるその他の文書・契約書、税額

建設業界で頻繁に使用される文書や契約書以外にも、印紙税法の対象となる文書は数多くあります。ここでは、その他の代表的な文書・契約書と税額について説明します。

継続的取引に関する契約書

継続的な取引(例:資材の継続的な供給)に関する契約書には、契約期間に応じて以下の印紙税が課されます。

  • 1年以内:4,000円
  • 1年超3年以下:1万円
  • 3年超:1万5,000円

会社合併に関する契約書

会社の合併に際して作成する契約書には、4万円の印紙税が課されます。ただし、合併当事者の一方が資本金1億円以下の場合、税額は1万5,000円に軽減されます。

金銭の貸借に関する契約書

金銭消費貸借契約書は、個人や企業が金銭を借り入れる際に作成する契約書です。貸主(お金を貸す側)と借主(お金を借りる側)の間で、貸借金額、利息、返済方法、期限などの条件を取り決めます。例えば、建設会社が運転資金として1,000万円を銀行から借り入れる場合などになります。

金銭の貸借に関する契約書には、貸付金額に応じて以下の印紙税が課されます。

  • 10万円以下:200円
  • 10万円超100万円以下:400円
  • 100万円超500万円以下:1,000円
  • 500万円超1,000万円以下:2,000円
  • 1,000万円超:4,000円

印紙税の非課税文書のケース

国や地方公共団体が作成する文書

国や地方公共団体が作成する文書は、原則として印紙税が課されません。例えば、公共工事の請負契約書や、国や地方公共団体が発注者となる業務委託契約書などが該当します。

契約金額が1万円未満の文書

契約金額が1万円未満の文書は、印紙税が非課税となります。ただし、契約金額を分割して1万円未満にすることで印紙税を回避することは認められません。

内部取引に関する文書

同一企業内での取引(内部取引)に関する文書は、印紙税が課されません。例えば、本社と支店の間で交わされる工事請負契約書や、親会社と子会社の間の取引文書などが該当します。

電子契約書(電子書面)

電子的に作成され、電子署名が付された契約書(電子契約書)は、現行の印紙税法の対象外とされています。ただし、電子契約書を印刷し、紙の文書として取り交わす場合は、印紙税の対象となります。

印紙税法の適用文書かどうか確認する方法

建設業界で取り交わされる文書や契約書は多岐にわたるため、印紙税法の対象となるかどうか判断に迷うことがあります。印紙税法の適用文書かどうか以下を参考にご確認ください。

文書の種類を確認する

印紙税法は特定の文書に対して適用されます。したがって、まずは文書が印紙税法の対象となる種類のものであるかを確認します。例えば、契約書、領収書、証書などは印紙税の対象となります。しかし、電子文書や一部の公的な文書などは非課税となることがあります。

国税庁のWebサイトを活用する

国税庁のWebサイトでは、「印紙税の手引」という資料が公開されています。この手引では、印紙税法の対象となる文書の種類や、税額の計算方法などが詳しく解説されています。文書が適用対象かどうか判断する際に、まずはこの手引を参照することをおすすめします。

参考:印紙税の手引|国税庁

税務署に問い合わせる

文書が印紙税法の対象となるか判断しかねる場合は、最寄りの税務署に問い合わせることができます。税務署の担当者が、文書の内容を確認し、適用の有無を判断してくれます。文書のサンプルや契約書のひな形を用意しておくと、スムーズに相談が進むでしょう。

税務署の連絡先は、国税庁のWebサイトで確認できます。

参考:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁

税理士などの専門家に相談する

複雑な内容の契約書や、高額な取引に関する文書など、印紙税法の適用判断が難しいケースでは、税理士などの専門家に相談するのも有効です。専門家が文書の内容を精査し、適切な税額を算出してくれます。また、印紙税だけでなく、その他の税務処理についてもアドバイスが得られるでしょう。

印紙税を納めないとどうなる?

印紙税法の対象となる文書に、適切な収入印紙を貼付しなかった場合、ペナルティが課されることがあります。ここでは、印紙税を納めなかった場合の具体的な事例と、その対処方法について説明します。

遅延利息が課される(過怠税)

印紙税を納めないと、過怠税が課されます。具体的には、印紙税を納付すべき課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されます。

また、印紙税法の適用文書の作成者が所轄税務署長に対し、作成した課税文書について印紙税を納付していない旨の申出書(印紙税不納付事実申出書)を提出した場合で、その申出が印紙税についての調査があったことによりその課税文書について過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、納付すべき印紙税の額の1.1倍に軽減されます。

なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されませんのでご注意ください。

納税義務違反と刑事罰

故意に印紙税の納付を怠る行為は納税義務違反と見なされ、最悪の場合、刑事罰を受けることがあります。具体的には罰金や懲役刑が科されるケースも存在します。

未納付の印紙税を納める方法

過去の文書で、印紙税の納付が漏れていたことに気づいた場合は、速やかに税務署に相談し、適切な処理を行うことが重要です。

なお、税務署への相談の際は、対象文書の内容や作成時期、印紙税の納付が漏れた経緯などを明確に説明できるよう、資料を準備しておくことをおすすめします。

電子契約書(電子書面)には印紙税がかからない

近年、建設業界でもデジタル化が進み、電子契約書(電子書面)の利用が増えています。2018年改正の印紙税法では、電子契約書は、印紙税法の対象外とされており、印紙税を納める必要がありません。印紙税法が紙の文書に対して課されるためで、電子的に作成・保存される文書はその対象外となります。

例えば、クラウド会計ソフトなどを使用して、電子的に領収書を作成・発行することが可能です。これにより、印紙税を節約するとともに、ペーパーレス化による環境負荷の軽減にも寄与できます。

注意点としては、その電子文書を印刷し、物理的な形で保管する場合は、印紙税が課税される場合がありますので注意が必要です。また、電子契約導入時には、当事者間での事前の合意が必要です。また、電子契約の有効性やセキュリティ確保に関して、法的規定や業界基準に従う必要があります。

年間100件の工事請負契約を交わす建設会社の場合、1件あたり1万円の印紙税が必要だとすると、年間100万円の印紙税コストがかかります。これを電子契約書に切り替えることで、大幅なコスト削減が可能です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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