• 作成日 : 2024年8月22日

施工計画書とは?作成義務があるケースや作成方法、注意点を解説

施工計画書とは、工事の目的や範囲、工程などを記載した書類で、請負代金が500万円以上の工事では作成が義務付けられています。

本記事では、施工計画書の目的や提出の流れ、作成手順を解説します。施工計画書の作成のコツや注意点をおさえて、施工計画書を効率的に作成しましょう。

施工計画書とは?

施工計画書とは、建設工事を円滑かつ適切に実施するために作成する書類で、工事の目的や範囲、工程、安全管理、品質管理などを定めたものです。

施工計画書は、工事全体の流れを理解し、関係者間での情報共有を目的とした文書です。発注者にとっては、工事内容や進捗状況を確認することができます。受注者にとっても、工事をスムーズに進めるための指標となり、トラブルを未然に防ぐことができます。

請負代金500万円以上の工事に提出が必須

建設業法では、請負代金が500万円(税込)以上の工事については、施工計画書の提出が義務付けられています。この基準は、建築一式工事、土木一式工事、電気工事、管工事、塗装工事など、建設工事全般に適用されます。

ただし、500万円未満の工事であっても、発注者から求められた場合には、施工計画書を提出する必要があります。

請負代金が500万円以上の工事に施工計画書の提出が必須とされているのは、工事の規模が大きくなるほど、工事の内容や進め方が複雑になり、トラブルが発生するリスクが高くなるためです。

施工計画書を作成し、発注者と受注者の間で情報を共有することで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な工事の実施につなげることができます。

施工計画書の提出期限

施工計画書は、工事の着手前に発注者に提出する必要があります。具体的な提出期限は、通常、工事請負契約書に明記されています。

一般的な目安としては、工事契約締結後、速やかに提出することが求められます。例えば、工事着手の3週間前までには提出が完了しているべきでしょう。こうすることで、発注者が工事内容を確認し、必要に応じて修正を求められるようになります。

さらに、施工計画書の内容を関係者間で共有し、工事の手順や方法について合意形成を図ることも重要です。提出期限を守ることで、工事をスムーズに進めることができるのです。

施工計画書と施工要領書の違い

施工計画書と施工要領書は、作成する会社やフローに違いがあります。

施工計画書は、発注者と施工会社(元請け業者)の間で結ぶ契約内容を明確化するために作成されます。施工要領書は、元請け業者と協力会社(下請け業者)との間で必要となる書類です。

主な流れとしては、工事が開始される前に、施工計画書を元請け業者が作成し、発注者に提出して承認を得ます。施工計画書が承認されると、実際の作業を行う下請け業者が、施工計画書をもとに施工要領書で具体的な作業内容や方法を作成します。

施工計画書の作成手順

①工事全体を把握し必要な書類をそろえる

工事を始める前に、まずは工事全体のイメージをしっかりと把握することが大切です。工事の種類や規模、期間、必要な人員、使用する機材や材料など、工事に関わる全ての要素を理解することが求められます。

また、工事を進行する上で必要となる書類を事前にそろえておくことも重要です。例えば、施工計画書だけでなく、安全管理計画書や品質管理計画書など、工事に関連する各種の書類があります。これらの書類は、工事の進行や完成後の検査など、工事全体の流れをスムーズに進めるために必要となります。また、発注者の要望や指示も確認します。

これにより、どのような施工計画が必要かを理解することができます。

②現場の状況を確認する

工事を進行するためには、現場の状況を詳細に把握することが必要です。現場の地形や周囲の環境、既存の建物や設備の状況などを全て確認する必要があります。

一般的な手順は以下の通りです。

  1. 現場調査:現場を直接訪れて、地形や周囲の環境、既存の建物や設備の状況を確認します。また、資材や機械の搬入ができる道路の幅か、騒音や振動の制限はどうかなど地域の状況も確認しましょう。
  2. データ収集:現場の状況を詳細に記録します。写真やビデオの撮影、地図や図面の作成などが含まれます。
  3. 分析と評価:収集したデータを基に、現場の状況を分析し、工事の進行に必要な計画を立てます。工事の規模や期間、必要な人員や機材、安全対策などが含まれます。

工事現場を訪れる際は、実際に工事をシミュレーションしながら確認していきましょう。

③発注者と擦り合わせする

工事を進行する上で、発注者とのコミュニケーションは欠かせません。発注者との打ち合わせを行い、工事の進行計画や必要な書類、現場の状況などあらゆる工事にかかわる情報の擦り合わせをします。また、発注者が工事に対して特別な要望や指示がある場合、それを理解し、施工計画に反映します。

④施工計画書のテンプレートを用意する

施工計画書のテンプレートを用意します。テンプレートを使用することで、必要な項目を見落とすことなく、効率的に施工計画書を作成することができます。

⑤施工計画書を作成する

テンプレートをもとに必要項目を記載し作成します。必要な場合には資料などを添付するとよいでしょう。

施工計画書の必要項目、作り方

施工計画書を作成する際には、必要な項目を漏れなく記載することが重要です。以下に、施工計画書に必要な項目と作り方について詳しく説明します。

施工計画書に必要な項目

施工計画書には、以下の項目を記載する必要があります。

  • 工事概要:工事の目的、規模、場所、期間など、工事全体の概要を記載します。
  • 計画工程表:施工の順序や各工種ごとの施工期間を記載します。
  • 現場組織表:工事現場の組織構成や各業務の担当者とその役割を明記します。
  • 指定機械:工事に使用する機械や設備を記載します。
  • 主要船舶・機械:海上工事の場合、使用する主要な船舶や機械をリストアップします。
  • 主要資材:工事に使用する資材・材料の情報(品名や数量、規格など)を記載します。
  • 施工方法:工事の具体的な施工方法や順序を詳しく記載します。
  • 施工管理計画:工事全般に管理方法を記載します。
  • 安全管理:事故防止に備えて安全管理や点検方法についての計画を記述します。
  • 緊急時の体制及び対応:緊急事態が発生した場合の対応体制と対応計画を記述します。
  • 交通管理:工事現場周辺の交通安全対策や規制の方法について記載します。
  • 環境対策:騒音や振動などへの対策を記載します。
  • 現場作業環境の整備:作業員の安全と健康を確保するための作業環境整備についての計画を記述します。
  • 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法:再生可能な資源の利用を促進し、建設副産物を適切に処理する方法を記載します。
  • その他:上記以外で施工計画書に記載が必要な項目を記述します。

これらの項目は、建設業法や公共工事標準請負契約約款などで定められているため、漏れなく記載するようにしましょう。

施工計画書の作成のポイント

施工計画書は、工事の全体像を把握し、適切な工程管理を行うために重要な書類です。作成にあたっては、次の点に注意しましょう

現場の条件に合わせた具体的な計画を立てる

工事の目的や概要、工事内容、工程、品質管理、安全管理などを明確にし、現場の状況や条件に合わせた具体的な計画を立てることが重要です。例えば、工事の規模や難易度に応じて、必要な人員や資機材を適切に配分し、無理のない工程を組むことが求められます。

関係者間の情報共有と連携を図る

関係者間で情報共有し、連携を図ることができるよう、施工計画書には各工程の担当者や連絡先を明記します。そして定期的に打ち合わせができる体制を整えましょう。これにより、問題やトラブルの早期発見と迅速な対応が可能となります。

詳細な工程表を作成する

適切な工程管理を行えるよう、詳細な工程表を作成しましょう。単に作業項目と日程を並べるだけでなく、各工程の所要時間や順序、工程間の関係性を明らかにします。

具体的には、工程間の前後関係や並行して進められる工程など、工程の連携状況を明確にする必要があります。例えば基礎工事が終わらないと建方工事に取り掛かれないといった具合です。

また、遅延を防ぐために、無理のない工程計画を立てることも重要です。

関連法規や発注者の要求事項を満たしているか確認する

施工計画書の作成にあたっては、建築基準法など関連法規や発注者の要求事項を満たしているか入念に確認する必要があります。法令違反や手抜き工事は、工事の中止や損害賠償請求などの重大な事態を招くおそれがあるためです。

図表や写真を効果的に使う

図表や写真を使い、情報をわかりやすくすることも重要です。ただし、情報量が多すぎると却って理解の妨げになるため、要点を絞った内容を心がけましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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