• 更新日 : 2024年8月31日

労災指定病院とは?一般病院との違い、手続きや必要書類、受診時の注意点

労災指定病院とは、職場での事故や病気による治療において、労災保険の適用を受けることができる病院です。労働者は治療費を支払う必要がなく、労災保険から直接病院に支払われます。一般病院とは異なり、労災指定病院では治療費の立て替えが不要です。

この記事では、労災指定病院の特徴、手続きや必要書類、受診時の注意点について詳しく解説します。労災による治療を円滑に進めるためのポイントを学び、労働者の健康と安全を守るためにお役立てください。

労災指定病院とは?

労災指定病院とは、労働者が職場での事故や病気により治療を必要とした際に、労災保険(労働者災害補償保険法)の適用を受けることができる病院のことを指します。

医療機関からの申請に基づき都道府県労働局長が指定した医療機関で、正式には「労災保険指定医療機関」といいます。一般的な診察も実施しています。

労災の治療費用は、基本的に労災保険が全額カバーするため、労働者は治療費を支払う必要がありません。労災保険から医療機関に治療費が支払われます。

ただし、無料の治療は労災保険の適用範囲内に限られ、病院の個室や備品の利用料は、患者が負担する必要があります。

注意点として、労災の治療には健康保険が使えないので、受付窓口で労災治療であることを伝え、健康保険証を出して治療を受けないよう気をつけましょう。

労災指定病院と労災病院

労災指定病院と労災病院は、名前が似ているため混同されがちですが、運営元とその指定の仕組みに違いがあります。

労災指定病院は、一般の医療機関が都道府県の労働局長に申請を行うことで対象になります。一方、労災病院は厚生労働省所管の「独立行政法人労働者健康福祉機構」が運営する病院のことです。労災病院は全国に32カ所あり、一般診療も実施しつつ、労働者の治療やリハビリなど労災への対応に重点を置いています。

労災指定病院は一般の医療機関が申請によって労災指定病院となるのに対し、労災病院は労働者健康福祉機構が運営する病院を指します。どちらも労災時の治療を無償で受けることができます。

労災指定病院と一般的な病院との違い

労災指定病院では、労災保険が適用される場合、労働者は診療費を支払う必要がありません。労災保険から医療機関に直接支払われるためです。

一方、一般的な病院では、労働者が一旦治療費を支払い、後日労災保険から還付を受ける形となります。また、治療費を請求するために、受診した医療機関で医師の証明をもらい、領収書を添付して、労働基準監督署に提出する必要があります。

労災指定病院一般的な病院(労災指定以外)
治療費の支払い支払う必要はない一旦全額立て替え
手続き療養の給付請求書を提出療養の費用請求書を提出
治療費の返還労災保険から直接労災指定病院に支払われるためなし労災認定後、労働基準監督署から指定の口座に振り込み

労災指定病院を受診するメリット

治療費を立て替えなくてよい

労災指定病院で治療を受ける最大のメリットは、労働者が治療費を建て替えなくても良いことです。治療費は労災保険から直接病院に支払われるため、経済的な負担を感じることなく、必要な医療を受けることができます。

書類手続きが簡単

労災指定病院で治療を受けると、労働者は、療養の給付請求書を病院に提出するだけで、治療費の支払いを労災保険から直接病院に行う手続きが行われます。労災指定以外の病院で治療した場合と比較すると、請求の手間が省け、よりスムーズな手続きが可能です。

労災指定病院で治療を受けるには?

労災指定病院で治療を受けるためには、まず労働災害が発生したことを、速やかに事業主や上司に報告する事から始めます。この報告により、事業主は労災保険の手続きを開始することができるからです。

報告が遅れると労災認定や保険給付に影響を与える可能性があるため、できるだけ早く行いましょう。

必要な書類と手続き

労災指定病院で治療を受けるためには、労働者が療養の給付請求書を病院に提出する必要があります。この給付請求書は、厚生労働省のホームページ「主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)」からダウンロードできます。

  • 業務災害の場合:療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
  • 通勤災害の場合:療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)

診療時の注意点

病院で診療を受ける際には、必ず受付窓口で労災治療である旨を申し出てください。労災の治療には健康保険を使用することができないため、健康保険証を提示しないように気をつけましょう。これは、労災指定病院でも労災指定病院以外についても同様となります。

入院時の労災保険の適用範囲

労災により入院した場合の入院費などは、療養(補償)給付でまかなうことが可能です。また、入院に伴う、入院費用や治療費、食事代、検査費用、通院にかかる交通費も補償対象となります。ただし、支給を受けられるかどうかは傷病等の性質に応じて決まります。

具体的な労災保険の適用範囲と対象外は以下の通りです。

  • 診察代:医師による診察にかかる費用
  • 手術費用:手術に必要な費用
  • 投薬費用:処方された薬の費用
  • リハビリテーション費用:リハビリテーションにかかる費用
  • 入院費用:病院に入院するための費用
  • 食事代:入院中の食事にかかる費用
  • 交通費(移送費):入院・通院のための交通費

以下の費用は労災保険の対象外となります。

  • 個室での入院代:個室を利用した場合の差額ベッド代
  • タオルなどの物品代:病院から借りた物品の費用
  • 診断書作成費用:診断書の作成にかかる費用(一部の場合を除く)

一人親方や個人事業主の注意点

一人親方や個人事業主の場合、労災保険に特別加入していないと労災として認められません。特別加入している場合でも、労災指定病院での治療を受ける際には、加入証明書を持参する必要があります。

労災指定病院の探し方

労災指定病院は、厚生労働省のホームページ「労災保険指定医療機関検索」から検索できます。

労災病院は、労働者健康安全機構のホームページ「労災病院」から情報検索が可能です。

また、かかりつけの医療機関を受診したい場合には、直接その医療機関に労災指定病院かどうか確認するのもひとつの方法です。

参照:労災保険指定医療機関検索|厚生労働省労災病院|労働者健康安全機構

労災指定病院以外で治療を受ける場合

労災指定病院以外の医療機関の場合、労働者は一旦治療費の全額を立て替えます。労災の治療には健康保険が使えないため、10割の負担となります。健康保険証を提示しないように注意しましょう。

必要な書類と手続き

病院の診療時には、医師からの証明と領収書が必要になります。併せて下記の費用請求書を記入して、労働基準監督署に提出します。労災が認められれば、立て替えた治療費は口座振込で還付されます。

この費用請求書は、厚生労働省のホームページ「主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)」からダウンロードできます。

  • 業務災害の場合:療養補償給付たる療養の費用請求書 (様式第7号)
  • 通勤災害の場合:療養給付たる療養の費用請求書 (様式第16号の5)

参照:主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省

労災指定病院から指定外の病院への転院する場合

労災指定病院で治療を受けているが、指定外の病院へ転院することになった場合には、転院元の病院から発行された紹介状を転院先の窓口に提出します。その際に、労災の治療であることを伝えましょう。

労災指定病院以外の病院で治療を受けた場合は、一旦は治療費を立て替えて支払いますが、上記で解説した「療養の費用請求書」を労働基準監督署に提出することで、立て替えた治療費が還付されます。

労災指定外の病院から労災指定病院に転院する場合

労災指定外の病院で治療を受けているが、労災指定病院に転院することになった場合、「療養給付請求を提出します。費用については、労災保険が適用されるため、基本的には自己負担はありません。

なお、治療を受けている労災指定病院を変更する際は「療養(補償)給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」を提出する必要があります。

以上の手続きについて、具体的な手順や必要な書類は労働基準監督署に確認することをお勧めします。また、転院の際には、変更前の病院からの紹介状等を持って転院先の病院に「労災です」と伝えることが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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