• 更新日 : 2024年8月24日

ピンハネとは?中間搾取の法的な定義や違法なケース、相談先まで解説

ピンハネとは、不当に高いマージンを取得することを指します。ビジネスにおいては、違法な「中間搾取」にあたるケースも存在します。

この記事ではピンハネの意味から法的な定義、建設業界における違法な中間搾取の例や対策などを解説していきます。違法な中間搾取をどう見分けて対処すべきか、理解を深めましょう。

ピンハネとは

ピンハネ、または中間搾取とは、ある商品やサービスを提供する際、実際の提供者と最終消費者の間に介在する第三者が、そこから不当に高いマージンを取得する行為を指します。

建設業界でもよく使われる言葉ですが、元請け業者が下請け業者に対して、実際の工事費よりも高い金額を請求することがあります。この差額が「ピンハネ」です。

ピンハネの具体例

  • 工事費のピンハネ:工事の発注者と受注者の間に入り、工事費から不適切なマージンを取るケースです。元請けが一人親方に対して営業をかけて獲得した案件を、そのまま職人に安い金額で発注することで中間搾取が行われています。
  • 資材費のピンハネ:元請けが資材を高値で仕入れ、その一部を自分の利益として取るケースです。下請けには実際の資材費よりも低い金額が伝えられ、その差額が元請けの利益となります。
  • 工期のピンハネ:元請けが工期を長く見積もり、その一部を自分の利益として取るケースです。下請けには実際の工期よりも短い期間が伝えられ、その差額が元請けの利益となります。
  • 設計変更のピンハネ:元請けが設計変更による追加費用を高く見積もり、その一部を自分の利益として取るケースです。下請けには実際の追加費用よりも低い金額が伝えられ、その差額が元請けの利益となります。
  • 遅延ペナルティのピンハネ:元請けが工事の遅延によるペナルティを高く見積もり、その一部を自分の利益として取るケースです。下請けには実際のペナルティよりも低い金額が伝えられ、その差額が元請けの利益となります。

ピンハネが問題視される理由

ピンハネが問題視される理由はいくつかあります。

まず、ピンハネは下請け業者にとって不利益をもたらします。なぜなら、元請け業者が下請け業者に支払うべき金額を差し引いてしまうため、下請け業者は実際の工事費よりも少ない金額しか受け取れないからです。この結果、下請け業者の利益が減少し、経営が困難になる可能性があります。

また、元請け業者がピンハネを行うと、他の業者が公正な価格で仕事を受ける機会が奪われる場合があります。これは、建設業界全体の健全な競争を妨げ、業界全体の品質を低下させる可能性があります。

さらに、建設に関するコストが不透明になることで、消費者が適正な価格を知ることが難しくなります。これにより、消費者が過剰な料金を支払う可能性があります。

以上のような理由から、ピンハネは建設業界で問題視されています。公正で透明な取引が求められている現代社会において、ピンハネは業界の信頼性を損なう行為とされています。そのため、ピンハネを防ぐための法律や規制が設けられています。

違法となる中間搾取の法的な定義

違法となる中間搾取、一般に「ピンハネ」と言われる行為は、特定の業界やケースにおいて法律で明確に規定され、違法行為とみなされます。中間搾取が違法となる条件は、業務委託や労働提供の過程で、不当な利益を得ることを指します。以下に、日本の法律における主な定義を示します。

労働者派遣法における定義

労働者派遣法では、派遣労働者の賃金から過度に手数料などを差し引く行為が規制されています。ここでの中間搾取は、派遣会社が派遣労働者から不当な手数料を取る行為を指します。

請負契約に関わる法律

請負契約の場合、下請け業者から過度のマージンを取ることは、民法や商法の観点から問題とされます。特に建設業界において、請負契約における中間搾取は、しばしば法的な争いの対象となっています。

不正競争防止法

不正競争防止法においては、技術やアイデアといった知的財産を不当に安価で取得し、中間利益を不当に得る行為が規制されています。特に、クリエイティブ業界やIT業界における中間搾取は、この法律の適用対象となり得ます。

建設業界においてピンハネが違法になるケース

ピンハネが違法となる主なケースは、労働基準法の6条に違反する場合です。労働基準法の6条では、「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と規定されています。

また、違反した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が発生します(労働基準法第118条)。

しかし、全てのピンハネ行為が違法とは限りません。例えば、一人親方が元請けから受け取った金額の一部を、労働者の給料以外の経費(例えば、人材の募集や管理にかかる経費)として差し引いている場合、その行為はピンハネとはみなされない可能性があります。

労働者派遣法違反

労働者派遣法は、派遣労働者の権利を保護するための法律です。建設業界での労働者派遣は、労働者派遣法に基づいて厳しく規制されており、適正な手数料を超えるピンハネは違法行為とみなされます。

具体的には、派遣先から受け取った賃金の一部を不当に差し引く行為が該当します。

また、建設業者が労働者派遣事業の許可を得ずに、労働者を他の事業者に派遣し、その派遣料金と実際に労働者に支払う賃金との差額を搾取するケースです。例えば、建設業者Aが、正社員として雇用している労働者Bを、許可なく他の建設現場に派遣し、その派遣料金が1日1万円であるにもかかわらず、労働者Bには1日6,000円しか支払わないといった行為が該当します。

未払い賃金

労働者が正当に働いたにも関わらず、その報酬が支払われない状況を指します。建設業界では、特に下請けや孫請けの労働者がこの問題に直面することがあります。

具体的には、元請け企業が下請け企業に対して適切な賃金を支払わず、その結果、下請け企業が自社の労働者に対して賃金を支払えない状況が生じます。これは、元請け企業が不適切な利益を得るために、下請け企業や労働者を搾取する行為となります。

このような未払い賃金は、労働基準法により禁止されています。未払い賃金が発生した場合、労働者は労働基準監督署に相談することができます。

契約法違反

建設業界では、透明性に欠ける契約形態を利用してピンハネを行うケースもあります。これによって、契約者の不利益につながる場合、これは民法に基づく契約法違反となる場合があります。

例えば、工事の発注者が工事費を支払う約束をしたにも関わらず、工事が完了した後に工事費を支払わない場合があります。これは、発注者と受注者間の契約に違反する行為であり、契約法違反となります。

また、工事の品質に関する契約に違反する場合もあります。例えば、発注者が一定の品質を求めているにも関わらず、受注者がその品質を満たさない工事を行った場合、これも契約法違反となります。

これらの契約法違反は、発注者と受注者間の信頼関係を損なうだけでなく、工事の品質や安全性を低下させ、結果的には社会全体の信頼を損なう可能性があります。

中間搾取が疑われる際の相談先

中間搾取が疑われるような状況に直面した場合、一人で悩まずに専門家に相談することをおすすめします。以下に、建設業界で中間搾取が疑われる際の主な相談先をご紹介します。

相談先連絡先相談内容
労働基準監督署最寄りの監督署へ労働条件、賃金未払い、労働時間等
公正取引委員会0120-060-110下請法に関する相談窓口
不当な取引方法、中間搾取を含む
地方自治体の相談窓口各自治体による労働問題全般
弁護士・法律相談所法律相談所による労働問題、訴訟代理等

オンラインでの相談

インターネット労働相談センター

職場のトラブルに関するご相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。専門の相談員が面談もしくは電話で無料で対応します。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

全国労働組合総連合(連合)相談ダイヤル

働くことで困った時の労働相談を電話(0120-154-052)、メール、LINE(期間限定)で実施しています。相談無料、秘密厳守で専門相談員が対応します。
参考:なんでも労働相談ホットライン|日本労働組合総連合会

自治体による無料法律相談

多くの市区町村では、住民に対して無料の法律相談サービスを提供しています。詳細は、お住まいの地域の公式ウェブサイトや市区町村役場にお問い合わせください。

労働組合への加入を検討

既に加入している労働組合があれば、そこの相談窓口を利用すると良いでしょう。また、未加入であれば加入を検討してみるのも一つの手段です。組合員であれば、様々な労働問題について専門的なアドバイスを受けられる場合があります。

中間搾取にあたらないコストの例

ピンハネや中間搾取は違法になりますが、受け取る金額が少ないからといって全てのケースで違法になるわけではありません。マージンを取ることが中間搾取にあたらない例としては、以下のような場合が考えられます。

これら必要なコストを差し引くケースではマージンが正当なコストとして認められ、中間搾取とは見なされません。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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