- 更新日 : 2024年9月4日
労務安全書類とは?建築業において作成義務がある書類の一覧まとめ
労務安全書類は、建設現場での安全管理を目的とした書類の通称で、建設業法に基づき作成が義務付けられている書類を指します。工事の進行状況や労働者の安全教育の履行状況などを記録・管理します。
本記事では、建設業における労務安全書類の重要性と具体的な種類、保管期間について詳しく解説します。
目次
労務安全書類とは?
労務安全書類とは安全書類の一種で、建築業界において労働安全衛生管理を適切に行うために必要な書類のことを指します。
これらの書類は、建設業法や労働安全衛生法などの法律に基づき、作成が義務付けられています。工事現場での労働者の安全と健康を確保し、適切な労務管理を行うために不可欠なものです。
建設工事において下請業者は、労務安全書類を元請業者に提出することが義務づけられています。
労務安全書類と施工体制台帳関係の安全書類
安全書類は「労務安全書類」と「施工体制台帳関係の安全書類」の2種類にあたる書類があり、一般的に作成が義務づけられている書類をまとめると下記のようになります。
労務安全書類 | 施工体制台帳関係の安全書類 |
---|---|
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労務安全書類は、工事現場の安全管理に関連する書類のことを指し、工事の進行状況、労働者の安全教育の履行状況、機械や設備の使用状況など、様々な情報を記録・管理するための書類が含まれます。事故の防止や労働環境の改善、法令遵守の確認などに利用されます。
一方、施工体制台帳関係の書類は、工事現場の施工体制を明確にするための書類のことを指します。これらの書類は、工事現場の人員配置や関連会社の関与状況など、施工体制に関する詳細な情報を記録・管理するために使用されます。
作成義務のある労務安全書類の一覧
工事安全衛生計画書
工事安全衛生計画書は、建設現場における労働災害防止のために作成される重要な書類です。この計画書には、工事安全衛生方針・工事安全衛生目標・工事のリスク低減措置などが記載されます。計画書は原則として下請会社が作成し、元請業者に提出されます。下請会社に法的な作成義務はありませんが、元請会社には労働安全衛生法により「一次下請会社に対する安全衛生に関する指導及び管理の義務」があるため、提出を求められることが一般的です。
新規入場時等教育実施報告書
新規入場時等教育実施報告書は、建設現場に新たに入場する作業員に対して行われる安全教育の記録です。この報告書には、教育の日時、場所、受講者名、教育内容などが記載されます。労働安全衛生法および施行規則に基づき、作成が必要となります。
安全ミーティング報告書
安全ミーティング報告書は、定期的に行われる安全ミーティングの内容を記録するものです。ミーティングで話し合われた作業について、作業日、作業場所、作業内容、作業方法、作業人員などが記載されます。これにより、現場の安全意識の向上と情報共有が図られます。
持込機械等(移動式クレーン/車両建設機械等)使用届
この届出は、現場に持ち込まれる大型機械の使用に関する情報を記録するものです。機械の種類、型式、能力、使用期間、点検状況などが記載されます。労働安全衛生法に基づき、適切な管理と安全確保のために必要です。
持込機械等(電気工具/電気溶接機)使用届
電気工具や電気溶接機などの小型機械の使用に関する届出です。機器の名称、型式、数量、使用期間、点検状況などが記載されます。これにより、労働安全衛生法に基づき、現場で使用される機器の安全確保のために必要です。
工事・通勤用車両届
工事現場で使用される車両や作業員の通勤用車両に関する届出です。車両の情報・運転者の情報・車両に対する保険加入の情報などが記載されます。現場周辺の交通安全管理や駐車場の適切な運用のために必要です。
有機溶剤・特定化学物質等持込使用届
有機溶剤や特定化学物質など、健康被害のリスクがある物質の使用に関する届出です。物質の名称、使用量、使用目的、保管方法、安全対策などが記載されます。労働安全衛生法に基づき、作業員の健康や周辺の環境の保護のために重要です。
火気使用届
溶接作業や切断作業など、火気を使用する作業に関する届出です。作業の内容、場所、日時、火気の種類、安全対策などが記載されます。火災予防や周辺への安全配慮のために、火気を使用する下請会社が作成し、元請会社に許可を得る必要があります。
施工体制台帳関係の安全書類
施工体制台帳作成通知書
施工体制台帳作成通知書は、元請業者が下請会社に対して施工体制台帳を作成したことを通知する書類です。建設業法第24条の8および建設業法施行令第7条の4に基づき、下請契約の総額が4500万円(建築一式工事の場合は7000万円)以上となる工事において作成が義務付けられています。
通知書には、元請会社名称、発注者名、工事名、工事場所、監督者名などの基本情報を記載します。
施工体制台帳
施工体制台帳は、建設工事の施工体制を明確にするための重要な書類です。元請業者が作成し、工事現場に備え付けることが義務付けられています。台帳には、工事概要、元請業者・下請業者の情報、主任技術者や監理技術者の氏名・資格、工事内容、工期などの詳細な情報が記載されます。
建設業法第24条の7に基づき作成され、適切な施工体制の確保と工事の安全管理に役立ちます。
下請負業者編成表
下請負業者編成表は、工事に携わる全ての下請業者の階層構造を示す書類です。一次下請負業者を頂点とし、各下請業者の関係性や担当工事の内容を明確に表示します。この表により、複雑な下請構造を視覚的に把握することができ、適切な施工管理や安全管理の実施に役立ちます。
また、重層下請構造の適正化にも寄与し、建設現場の透明性向上にも貢献します。
再下請通知書(変更届)
再下請通知書は、下請業者がさらに他の業者に工事の一部を請け負わせる際に、元請業者に提出する書類です。建設業法第24条の8に基づき、再下請負の内容、再下請負人の商号、名称、住所、許可番号などを記載します。工事内容や下請構造に変更が生じた場合は、変更届を提出する必要があります。
これにより、元請業者は常に最新の下請構造を把握し、適切な施工管理を行うことができます。
施工体系図
施工体系図は、工事における元請業者から各下請業者までの契約関係を図示した書類です。建設業法第24条の8第4項に基づき作成され、工事現場の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。図には、発注者、元請業者、下請業者の名称、担当工事内容、技術者名などが記載され、工事関係者や第三者が現場の施工体制を一目で理解できるようになっています。
施工体系図の適切な掲示は、建設工事の透明性確保と安全管理の向上に寄与します。
作業員名簿
作業員名簿は、工事現場で働く全ての作業員の情報を記載した書類です。名簿には、作業員の氏名、所属会社、職種、資格、健康保険加入状況などが記載されます。この名簿により、現場責任者は日々の作業員の出入りを管理し、適切な安全管理や労務管理を行うことができます。
また、緊急時の連絡体制の確立や、不法就労の防止にも役立ちます。作業員名簿は常に最新の情報に更新され、労働安全衛生法に基づく労働者名簿としての役割も果たします。
労務安全書類の書式、フォーマット
労務安全書類の書式については、一定の決まりはありません。下請会社の作成する書類のうち、もし元請会社からの書式の指定が無いようであれば、全国建設業協会が定めた、「全建統一様式」を活用すれば、必要事項を漏れなく記載できるでしょう。
また、安全書類を電子化することも可能です。労務安全書類と施行体制台帳関係の安全書類をインターネット上で管理できる「グリーンサイト」を利用すると、書類の確認や受領を一元管理できます。ペーパーレス化やコストの削減にもつながります。
労務安全書類の保存期間
労務安全書類の保存期間は、その内容や目的により異なりますが、一般的には建設業法第40条の3に基づき、原則として5年間の保存が義務付けられています。
ただし、すべての書類が5年間の保存というわけではありません。例えば、完成図書や施工体系図などは10年間の保存が必要とされています。
これらの書類を決められた期間保存しておくことは、後日発生する可能性のあるトラブルに対する証拠となります。また、保存しなければならない期間を守らないと、法的な処罰の対象となる可能性もあります。
建築業における安全性の推移
建設業労働災害防止協会の調査による労働災害発生状況を見てみましょう。昭和48年から令和4年までの全産業と建設業の労働災害の死傷者・死亡者数の推移は、長期的に見て確実に減少傾向にあることがわかります。
これは、安全教育の充実や災害防止対策の強化など、業界が真剣に取り組んできた結果が功を奏したものと考えられます。
今後も建設業の安全性をさらに向上させていくためには、現場作業員の意識改革や、新技術の活用など、継続的な取り組みをし、労働災害の発生を最小限に抑え、より安全な職場環境を実現していくことが重要な課題といえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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